私は、うまいのに何となく腑に落ちない、伝わらない歌をたくさん聞いてきました。多くは本人も知らないまま、真似が抜けていないからでした。もちろん、真似ていなくても(CDなど聞いたことがなくても)そっくりになってしまうこともあります。音楽をすぐれたレベルで奏でると、共通するところがあるからです。
しかし、誰にも地に足がついている、まわりがどうであろうと、時代や世の中が何であろうと、それを超えて輝くオリジナリティは潜在的にあるのです。それが、自分(声、体、性格、ルーツ、信条、生き方)を核にした、こだわり、深く練られた作品となっていくようにしているかどうかなのです。もちろん、同時代で誰一人認めないものとなると、絵画などではともかく、歌では成り立たないでしょう。