私がベテランのヴォーカリストとレッスンするときは、ギャップを明確にするそのために、わざとテンポダウンやフレーズを伸ばしたり、大きくしてもらったりします。すると、本人の限界がみえてくるので、そこを強化し器を大きくします。
たとえば、フレーズ間を0.5秒で歌わなくてはいけないところを、プロなら口先でたやすくカバーしてこなします。私は、その人の呼吸の流れとしてもたせられるまで、2秒かかるなら、ずっとそこでやります。やがて1.5秒、1.0秒と感覚と体が伴ってきて、0.5秒にまでなるのを待ちます。
トレーニングにおいては、何よりもそのプロセスを大切にします。そこで、どれだけ手間をかけ厳しくやるのかが、結果に表れてくるのです。表現として成り立っていることが、曲よりも優先すべきだと思うからです。そこにイメージと体(息)が足りないため、声のコントロールが欠如しているという事実がつきつけていたらよいのです。これこそが、よりすぐれている人との差であり、間違いということではないのです。むしろ、バランスがとれていてうまいと評されるから、分かりにくいのです。