一流になるためには、いくら理論や分析をして、方法を取り入れてそれだけでは不可能です。音声科学は、近年、進歩を遂げ、いろいろなことがわかってきました。多くの発声に関する理論や方法の間違い(というか、仮説)も修正されました。
トレーナーは、研究者でなく、他人の声を育成することが仕事です。トレーニングによって人がどれだけ育つかがもっとも大切です。しかし、秀れた人材の輩出という点では、30年前よりも劣っているのでないでしょうか。平均の人は多くなったのに、トップクラスの人が出なくなったのは、教育の方向や方針、トレーナーの問題が大きいです。声に限っては、その傾向は顕著です。同じルール上で競うスポーツのように、比較は単純ではありませんが。
どの分野であれ、セミプロ化すると、底辺のレベルは上がりますが、ずば抜けたプレイヤーが出なくなってくるわけです。昔の人は理論、分析をしていません。努力の量と時間によって、すぐれた技量を手に入れる人がでたわけです。現実に結果を出した条件や方法を、もっと研究することです。一方ですぐれた人を分析しても、その分析ですぐれた人を生み出せるわけではないことを知ることです。