私は、これまでも邦楽の表現には、タッチせずに、その声づくりに声楽やどちらかというと洋楽よりの発声からきたヴォイトレを試みてきました。そして、一定の成果を声づくりでは出してきました。(邦楽独特の音感トレーニングについては、さらなる改良が必要と思っています)
腹から出る体、呼吸、共鳴づくりや発声のコントロール、などについて、人間の体という共通の基盤をもって強化、調整をしてきたのです。
今度は、その逆を行うわけです。ただ、あまりにくせの多いそれぞれの歌唱表現については、保留にします。ことばよみ(詠み)や声だしのトレーニング、つまり朗じるところから入ります。とはいっても、元々私のテキストには、日本の詞、詩歌や落語がたくさん入っています。特に歌舞伎の口上、香(具)師の口上(もの売りの口上のこと、「外郎売り」、ガマの油売りなども含まれます)などは、和の発声、まさに長唄や詩吟から入った方が近いともいえます。
役者や声優、あるいはビジネスリーダー(経営者やマネージャー講師など)にとっては、日本の合唱団のようなキレイな声よりも、こういう人の心をぐっとつかむ、しっかりとした声が必要です。
講談や浪花節(浪曲)などは、日本では、話の手本であったのです。かつては寺子屋で漢詩を吟じ、大学の弁論部で弁舌を鍛え、政治家になった人もいました。
歌と語りが大きく離れてしまった今こそ再び、声としての統一をはかりたいと存じます。オペラもミュージカルも歌いあげるのは日本人だけ、本場、もしくは一流レベルでは、もっと語るように叫ぶようにしゃべるように演じられているのです。それは、まさに歌舞伎、狂言、能から学ぶべきことでもあるのです。