声を地声、裏声やファルセット、他の声、胸声―頭声、どのように名づけるか、分けるのかの論議に、私は加わりません。男女によって、命名や使い方が違うこともあります。頭声、ファルセットは男性、裏声は女性など。
声帯振動による生理的なレベルで、地声、裏声に二分するのは確かなことです。二つの声区ですが、それを一声区、三声区と言う人がいてもよいと思います。
頭声や胸声というのは頭や胸から出たり、頭や胸に響くのではありません。体振からのイメージ言語といえます。二つの発声は、分けることも混同させることもできるので、ややこしくなるのです。
よく使われる、声区という訳語も困ったものです。使う人によって定義が違っているからです。レジスターと言う人もいます。レジスターは、パイプオルガンの、「登録された音程」を弾くと、音階を作れる一連のパイプが選びだされ、演奏できる、その音階を作れるということです。レジはコンビニのレジと同じ用途です。ですから、どこか1点で「声区のチェンジ」が起きるというのでなく、元々、重なり合うニュアンスが強いのです。
発声のしかたが違うといっても、うまく混在させて使うことでは、一声区のようにシンプルに捉えるのも、一案です。上の線と下の線の2本で、その範囲内でどう使うか、二者択一でなく、ミックス度合ということでよいと思います。
トレーニングには、地声、裏声それぞれのアプローチがあってもよいと思います。これは胸式呼吸と腹式呼吸のようなものです。呼吸からみると一つで、胸式と腹式といっても、切り離せないのです。
混合、混在させるというミックスよりは、融けて合わせる意味で「ブレンド」ということばを使う人もいます。私もミックスヴォイスよりブレンドヴォイスというニュアンスに近く捉えています。
私は音色を、大切な判断基準としています。表―裏、開いた―閉じた、前―後(奥)、明―暗など、声のイメージで結びつけています。