基礎の力をチェックという切り込みを細かくつけていくことで、気づいていくためのよい勉強になるのです。プロの人は、私よりも歌えるからと、私よりもよい基準も持っているとは限りません。プロの持つ基準を、私ほど根本で把握しているとは限りません。
歌い手特有の現象ともいえますが、プロ中のプロであるほど、他人の長所には気付きにくいものです。
そこで、私は必ず、他の人と異なる視点や解釈を提示します。それを取り入れるのも、参考意見として聞くのも流すのも自由です。
声や歌については、他の人のものは客観視できても、自分のものについてみると、ぶれやすいからです。誰がみても、明らかに、悪くなってきたのを、よくなったと思うようなケースも少なくありません。
私は根拠や判断基準を、できるだけことばにします。ことばは、余程勉強しなければ、使えません。わかるが伝えきれない、すると、レッスンでなくなります。
相手がアマチュアなら、まねして、よい見本と比べさせることも一つのやり方です。これでわからせても実感するのは中々難しいです。実感できるくらいなら、修正できているからです。ほとんどが、間違ったまねになる、間違った実感だから伸びないのです。
判断できていないけれど、よいと思うからとか、それがいくつかあるから、そのなかからベストを決めるというのが、レッスンでは、起こりがちです。本人が判断できないケースでは、どれも高いレベルでは通用しません。
可能性のあるのを示すことなら、よいと思います。選曲できない人と同じですが、耳の力を磨かなければステージでは難しいでしょう。
日本のプロは、案外、くせとワンパターンが売りになる人もいます。しかし、そこで長く多くの人に通用していくには、かなりの研究や研鑽が不可欠です。