ヴォイストレーナーの選び方[アーカイブ版]

声、発声、聞くこと、ヴォイストレーニングに関心のある人に  バックナンバーは「夢実現・目的達成のための考え方と心身のトレーニング」をご覧ください http://bvt.txt-nifty.com/trainersen/

役者と声楽家

 私が声楽家と組んでいるのは、彼らのオペラの舞台での実力レベルでなく、5年、10年、15年以上、発声や共鳴、呼吸を人並みでないレベルで高めてきたプロセスを買うからです。そこまでのプログラムと方向性に、発声の基礎の共通点を見出しているからです。

 彼らは、先輩、同輩、後輩と、一定の基準をおいて多くの他人の成長を長くみてきています。それは、よい経験です。

 研究所の発足時、私は役者の声をベースにして考えました。日本の声楽家一般よりも個性的かつ、強く豊かな声に思えたからです。ただし、日本の歌い手の場合、声域(高音域)での問題があり、そこでは共鳴を集めて行く必要があったので声楽を使うようにしたのです。

 役者は、3年、5年くらいは声もセリフによって鍛えられますが、その後は、表情やしぐさに声が従います。死にそうな演技をしたら、死にそうな声が出るのです。そこは個性というより、なり切りようです。死にそうな声のメソッドやトレーニングはありません。役者は、役によって、声はバラバラです。

 声楽家は、死の間際のシーンの表現にも体からの歌唱、つまり発声呼吸、共鳴をキープします。ことばは発声を妨げることでもあります。となると、セリフでの発声よりは、共鳴での発声の方が高いレベルをキープできます。

 これは、ことばを伝えるという限定のある役者と声の輝き(共鳴)を優先できる声楽家の大きな違いです。それを職業や現場での使い方で分ける必要はありません。

 私は、役者や声優だからこそ、ことばを離れた声だけのトレーニングをすることに意味を感じるとよいと思います。ベテランは、セリフを読ませたら、もうスタイルができていて、あまり直すところもない。さらに声の力をつけるなら、イタリア曲の歌唱(アリア)を使う方が、極端ゆえに気づく、変わる―という結果につながるのです。