私が皆さんと接して使っている声は、もっとも私らしい理想の声やよい声というよりは、仕事を完遂できる声です。崩れずに8時間以上の持続に耐えられる声です。よい声かどうかは別にして、タフな声、強い声です。仕事に使うのですから仕事の声です。
レッスンのなかでは、変えることもあります。使える声といっても、応用されるのですから、ケースバイケースで多様なものです。
応用というのは、ある意味では調整でなしていることです。自分のもつ器のなかで上下左右と動かしていくことは、器の拡大とは違うのです。これを上下左右、器のなかでも大きな振り幅で動かしていけると、結果としてしぜんと器を大きくしていくことになります。リスクをおさえ、時間をかけてやっていくことで、トレーニングとしてみると正攻法なのです。
大人の声になっていくのは、人生の歩みとともにある声です。トレーニングではない、しぜんな日常の声の進歩が、本来は理想です。