私の考え方は最初から変わっていません。「基本講座」「実践講座」に、具体的手段が細かく述べてありますので、参考にしてほしいと思っています。
最初は、私自身が学び、習得してきたプロセスの体系化で、私の考え方と実践が入っています。その後、改訂したのは、他の人がより対応できるようにするためです。他の人に教えてきた経験を加えたのです。仮説を実践の上に検証して、同じ本を出せたのは、私くらいでしょう。ありがたいことです。
本の使い方や意味については、何度もくり返し述べています。こういう類の本はなかったため、デビュー本は、今からみると不親切で自主レッスンにそのまま使うには、いろいろと不足がありました。
ここでレッスンをしている人を元に書いたからです。ありがたいことに、その後、私の本で自主レッスンをしてきた人を、ここでたくさんみることになり、いろんな気づきがありました。
トレーナーと組むことによって、別の面からの気づきも多くありました。私から学んだ人が教えるのをみると、おのずと、その人がどこを学び、どこは学んでいないかがわかります。相手に対して同じように継承しているのはどこで、改良や別のメニュにして与えているのはどこか、それはなぜか、と考えます。よしあしはともかく、ここでの伝承、伝統ということの現実が、見事にまでわかるわけです。
私がどのトレーナーよりも恵まれていたのは、365日、全力投球する努力家の弟子(私がそのように言うと怒るかもしれないので、生徒でもいいのですが、敬意を込めて)に恵まれたことです。人として伸び盛りの時期に、ヴォイトレの5年から8年くらいのプロセスを何百人の単位でみるのは、声楽や邦楽でも、なかなか難しいのではないかと思うのです。音大、宝塚歌劇団、劇団四季あたりでも、果たして可能でしょうか。