10.歌唱/ステージ
ですから、声と歌の行き来をしつつ、声の評価と歌の評価を噛み合わせていくのです。プロデューサーやバンドは、声や体よりは歌、あるいは音楽で判断します。その人の声のベストよりも作品としてのベストです。その人の声のベストで見てから作品に歩みよって…
「客がどうこうだから廃れた」というようなことは、アーティストや創り手側は口にしてはいけないことです。アーティストというものを人が欲しなくなったら、どうなるのでしょうか。そんな日がくるのでしょうか、と言っている人は平和呆けです。スターも絶滅…
「聞ける歌がなくなりました」と言われて何年にもなります。どの時代でも年をとると、若い人の新しい感性についていけなくなるから当然です。とはいえ、20世紀の歌と、その歌手のもつ力、歌の影響力を比べたら、今や風前の灯ともいえます。その理由について…
TEDの番組で、アポロ13号やタイタニックのセットを手がけたロブ・レガートは、「人は事実、現実そのものでなく自分の記憶の再現を望む」と語りました。映像として成功するのは実写とは限りません。模型の方がすぐれて、リアルに人の心に働きかけることもある…
生きているなかで、生活のなかの言動は、しばしば、まわりの人の心を打ちます。語りはせりふであり、歌です。私はよくリアリティと言いますが、声はリアルであれば、その人がその人であるという、絶対的な存在として伝わります。 話と歌の評価を聞く人がいま…
すぐれたアーティストは1曲、1フレーズで客を魅了します。そういうつもりで8曲で30分くらいのステージを構成しましょう。 構成する力は、プロとしての腕が発揮されるところです。 カラオケのチャンピオンとプロ(実力があるプロ)との違いは、1曲で終わるか…
お客さんは、会場に足を運び、黙ってあなたの表現を聞いてくださるのです。あなたの応援団であり、味方です。楽しみに来ています。できたら、あなたの表現で堪能したいのです。せっかく出たのに、無難なだけで、印象に残らない人がたくさんいます。声もよく…
日本の教育を受けると、間違ってはいけないと、テストのように、ステージで自己チェックする人がいるのです。努力、やる気は認めますが、客を前にしてのこういうまじめさ、正直さは褒められません。 客の心の先を読んで客を楽しませることです。演出、コーデ…
嘘をリアルに演じているのがステージです。歌詞のストーリーでも、あなたの実体験ではないのです。間違えたり、言い淀んだり、噛んだり、飛ばしたりしても気にしてはいけません。 気にしなければOK、気にしたときにOUTです。間違えたことを、客に知らせてし…
一番忘れたら困るのは出だしと最後です。出だしだけは、たくさん曲があるときは、カンニングペーパーに書いておいてもよいくらいです。曲順も忘れやすいですが、これはプレイヤーに聞いても形はつきます。 人間の慣性を利用します。本番の曲順通りにいつも練…
2ヶ月前になれば、わざと間違いを促す試みをしてみましょう。絶対に歌詞は見ないこと。覚えていなくても見ないことにします。 レッスンでは、プロの場合は、本当に時間がなく、やむを得ないときもあります。私は、みないで「レッスンでは楽譜でも歌詞でも見…
ヴォーカルの鬼門は、歌詞を忘れることです。一週間前くらいまで歌詞を見て歌い、覚えたつもりのまま出ていくのが、よくある失敗するケースです。これは、「忘れるという失敗」を練習で経験していないからです。間違えるのも練習です。 レッスンのときに、よ…
曲の向き不向きは、その人を目の前にしただけではわかりません。実際に、2曲くらい違う感じの歌を歌ってもらわないと何とも言えません。声と同じく、曖昧なものです。カラオケなら、声が似ているプロをカバーするとよいと言われますが、ごまかしになりかねま…
選曲は、あらゆる条件を踏まえて考えるべきことです。「歌い手は客によって評価される」と割り切れば、自分の歌いたい曲よりも客の求めることを満たせる曲を選ぶべきでしょう。「好みより才能や必要」優先です。わからないなら、先生やプロデューサーに選ん…
ステージへのアドバイスは、原則として、「直前に急な変更はしないこと」です。ここで直前というのは1ヶ月くらい前を指しますが、出来不出来によって変えないことです。できたら、6ヶ月くらいは、セリフや歌をあたためていきたいところです。もちろん、例…
ステージ論は、ステージ経験の豊富な人からアドバイスをもらえばよいことです。何万人、何千人の前で何回もやっている人もいれば、毎日、何百人の前でやっている人もいます。ですから、「プロの人、人前でやることを生業にしている人に聞けばよい」と思い、…
技術は、表現と基礎を結ぶものです。心身の基礎というのなら、一流のアスリートなら充分にもっています。本番に強く、日常での心身の管理ができていなければ、スポーツで結果を出せません。歌手や役者はアーティストといっても、画家や作家よりはアスリート…
「表現というものは、ジャンルを超える」、その最たるものが神懸かり的なもの、ファインプレー、あるいは、「ゾーンの状態」です。一方で、「基礎というのは、ジャンルを超える」のです。心身の力を欠いたアスリートもアーティストも、一流の仕事人もいませ…
感動を結果とする世界を妨げるのは、退屈に麻痺していく感覚です。ですから、私はレッスンは30分で1コマで充分としています。本当のところ、初心者には10分でもよいとも思います。正味15分のレッスンもあります。60分あるなら2人のトレーナーをお勧めしてい…
音が導くように―まさに、プロのダンサーはそこで勝負しようとしているから、日本人でも追いつけ追い越せで、マイケル・ジャクソンのバックダンサーのレベルにまで到達しました。 歌はまだまだです。お笑いやダンスほどにも自分自身でつくるということさえ考え…
「自分の歌」とは、私は「本人だけの声とフレーズ」をもってオリジナリティとします。自分のつくった歌がヒットしたのでなく、他人と同じ曲を歌っても、その歌手独自のものになるということでのオリジナリティのことです。 私はが、古いものは必ずしも好きで…
私は「イベント」と「ライブ」ということばを意図的に使い分けています。「イベント」というのは、限られた時間で行われるものです。たとえば、何年かぶりに懐かしんで聞く歌は、人の心を打ちます。でも、毎日となるとどうでしょう。 私は、その日に聞いたら…
私は、オーディションを、ときに客席のさらに前や、ずっと後ろからみています。私は、私の見方だけに踊らされないようにとても気をつけてきました。トレーナーやお客さんの反応も受けとめて学んでいったのです。私の尊敬するアーティスト(複数)ならどう聞…
表現は、伝わることが第一に大切ですが、本人の肉体とその使い方に負うダンスも、今や複合アート化した歌(というより音楽のステージ)とは、かなりのズレが生じています。日本のダンスのレベルはアップしました。Jリーグ並みで、世界に通じるトップダンサー…
私はいろんなステージで、本人や本人たち(出演者)だけが楽しんでいるステージをたくさんみてきました。いや、トレーナーという立場上、プロセス上の人をたくさんみているのですから、半分以上は、そういうステージであり、そのうちのいくつかは本人も楽し…
私の体験でも、プロとして、自立して一本立していく人は、楽しいとか楽しくないとか、そんなことではありません。聞く人やみる人が「楽しめるかどうかが全て」というのは、当たり前のことです。 アスリートが、昔の特攻隊のように、オリンピックへ日本代表と…
ダンスに距離をあけられてしまった日本の歌、そしてヴォイトレを述べます。 トレーナーが、最初に「歌やステージを楽しめ」と教えるのは、日本では、あまりに当たり前となってしまったことです。それと、真逆の私は、けっこうな批判も浴びてきました。「海外…
小さい頃からピアノを弾けた人は、なぜ弾けるようになったのか、覚えていないでしょう。教えるときには、もの心ついてから学んだ人よりも苦労します。弾けるようになった手順を覚えていないからです。 歌ならなおさらです。もの心ついたときにスターになった…
歌というのは、それだけで完結された作品です。レベルが高ければ、それに対してお客さんは感動するし、評価します。エンターテイナーとしての実力は、かつては音声での表現力を中心としました。音声で完結されたものは、一方的に発信されてから後に価値を生…
日本の場合は、お客の感覚の方が最大に優先されているかのようです。歌手は年齢と共に声を使わなくなってきます。20代くらいでハードに歌ってきた人でも、30、40代で声が出なくなる、それは使わないからです。ステージの要求としてそうでないもので感動させ…