私自身はどちらかというと教えすぎるより、教えないタイプのトレーナーに好感をもっています。声や歌は、誰でも扱ってきたのですから、できていないなら教えられない、本人の感じ方やイメージが変わるまで待つしかないものです。今の時代、それではもたないので、対応としては、変わらざるをえないとは思うのです。
ここには口伝の邦楽のお弟子さんも、師匠の許可をもらっていらっしゃる場合は、改めようと思ったのです。師も声の扱いは、自分の体験でしかないし、すぐれていたからこそ、他へ学ばせに行く度量もあるのでしょう。受け入れ先の私が同じでは困ることになると思ったのです。
ヴォイストレーナーは、相手をトレーナーの好みへ沿わせようとしてしまう結果になりがちです。
条件づけといって、初めてみたものを親と思う、生まれたての鳥のように、初めてついたトレーナーによって、その人の発声は、大きく左右されてしまうのです。それは多かれ少なかれ起きてしまうことです。自分を変えるためにトレーナーにつくのですから、よかれあしかれ、そこからスタートするのは、普通のことです。