似たらよいのかという問題も大きいです。似ていると思われるのは、表面しかとっていないからです。本質的なものを学べていたらおのずと師と異なる自分の声と呼吸での表現がでてくるからです。
そのプロセスの判断は、声に関しては師といえども容易ではありません。すぐれている師ほど、潜在的に自らのもつ条件を意識していません。自分の体験や練習法を伝えても、それはその上でのことです。
ですから、「俺はそんなところでつまずいていなかった」という人ほど、教えられないのです。小さいころからプロとして歌っている人に、いい年齢で音をはずす人の直し方はわからないでしょう。声にはそこまで生きてきたすべて、体、心、感情を伴って入っているのです。形で入れるくらいなら、苦労はしません。