声については、専門家のようであって、専門は何かといえば、出自(出身畑)のことに過ぎないのです。それがアナウンサーなのか劇団員(役者)なのか、歌手なのか、演出家なのか、セールスマンか、声優なのか、ということになります。ただの人でも、人生経験をたくさん積んだら、専門家ということもあり、でしょう。まして人心を掌握するために声を毎日、使ってきた政治家や社長、セールス、渉外、交渉、水商売なら、声の表現技術の専門家です。
ですから、誰にでもできる、誰に対してもできる、と思ってしまう危険性があります。そこで、ここでは2つだけ注意します。
一つは、専門家というのは、自分の専門の範囲や能力の限界を知っている人です。
もう一つは、専門家は、他の分野の専門家の範囲や能力を知っていること。自分よりもふさわしい人材がいるときは、そちらを紹介できる能力、人脈を持っていることです。
私を頼っていらっしゃるのは、この2つをもっているからです。
研究所内にも多彩な人材をおき、外にもそういうネットワークを持っています。そこで我を離れた判断ができるのが、専門家の価値です。素人にはできない、専門家ゆえの強みです。
ですから、皆さんは次のことを覚えておくとよいでしょう。
1.世の中に万能な人はいない
2.その専門家の専門領域と、その専門外を知ること(本人に聞いて、きちんとそういうことを話せる人は少ないです)
3.今、ここでの判断が、ベストとは限らない。ずっとその疑いはあってもよい。今の楽や今のもっともよいのが将来によいとは限らないし、むしろ可能性を早く狭めることもあるようなことです。
あなたにとっての世界一の優れたトレーナーに会うのは、あなたが優れていくことによって、そのあとに起こってくればよいことです。
私は、それを妨げない努力をしています。よりふさわしい人を紹介するというのも、医療などでないとわかりにくいものですが、そのためにあなたが判断力をつけられるレッスンやトレーニングをセットするように心がけています。