体、心の研究と表現の研究、この二極をやりましょう。その間、喉については一時保留すべきだと思います。喉の説明がなくても声の表現ができます。
私は、この分野で恐らくは世界最高レベルの専門家や医師に会ってきました。その上で、学者の研究や器材に一方的に依存せず、これまで通りトレーナーの直観でやることを勧められます。そこで声紋分析や医療のセンサーなどを導入しても、まだ一部の使用にとどめています。
これらを使うと面白いし、見栄えがするのは確かです。PR、客寄せにはなるでしょう。でも本以上に勘違いさせる可能性があります。声の原理の可能性は追求していくとしても、限界を踏まえなくてはなりません。ゲームや占いとしては、声の分析は面白いのですが、その先は慎重であるべきです。
科学や医学が権威づけにつかわれるのは、いつの時代も同じです。多くの本は、出た時点で、すでに古くなってしまいます。すでに誤った説になっている例も多いのです。巷で売れた本にはファンがつきやすく盲信しがちです。
私も彼らと同じミスを犯しました。私の考えでなく、引用において、後に学会などで否定されたことを、その人の名とともに引用したことがあります。学術的な図版や用語、定義、理論は本に引用せざるをえず、こういう間違いが起きてしまうのですが、できるだけ使うことを控えるようにしています。
とはいえ、その引用でトレーニングを間違え、効果を損なうようなことはありません。拙書「声のしくみ」ヤマハミュージックは、声の知識をまとめたものです。引用元の本も読みましょう。
間違いをあげていくと、経営の本、投資の本、健康の本などは、ほとんど世の中に出せなくなります。ですから、皆さんにも短期でなく、長期でものを見るようにしてほしいのです。