a.ステージ=状態、調整、リラックス、バランス(声域)、本番
b.トレーニング=条件、強化、集中、インパクト(声量、音色)
これは、私がよく使う声や歌の本番(ステージ)とトレーニングの違いを述べた対比表です。aはマイナス、ミスをなくす方向、bはプラスをみつける、個性を引き出す方向です。
本人自らbからaに行くのが自然な流れです。つまり幹から花です。しかし、声に関しては日本では、幹がしっかり根を下ろさないうちに花を求めるので、あまり大きくなりません。
日本では、形、それも輸入された作品のコピーや、そこからの評価基準を薄めて採用してきました。そのために、手本をまねる傾向が強いので、その形が漠然としていた頃は、まだ個性豊かでパワフルなスターも出ていました。だんだんと形をまねるだけになり、まさに形になっていったわけです。
声楽家もヴォイストレーナーもaでの技術面については、うまくなったと思います。音痴やガラ声のような歌はなくなりました。それは同時に、個性をも殺すとまではいわないまでも、個性を伸ばせないようなものにしてしまったのではないでしょうか。第一級の人材が出なくなっています。
私などはトレーナーの判断で、育てたりできるのは、一流のアーティストではないと知っています。そうであれば基準の判断力を与える、プラスして考え方や精神のフォローをすることで充分と思っています。
それではレッスンになりませんから、きめ細やかにその人をメイキャップし演出していく、日本ではそういう形を持った人でないと使いにくいといった傾向があります。才能よりも、従順さを優先しているからですが…。