多くの人を通して、一つの歌、一つの声のその成果を、最高のレベルに結実させるようにしています。それには、声が成立するところがスタートです。それを私は「ハイ」という一声から探っています。
一声で成立させることが無理なら、一フレーズで、一フレーズで無理なら一曲与えようというのが、私のスタンスです。これは一曲が無理なら一フレーズで、一フレーズが無理なら一声でという絶対的な厳しさの中で声の本質を取り出すためです。「ハイ」と成り立たなければ何にもなりません。完成には遠くとも、一フレーズで使い、一曲で使って知っていくことです。こなすとかまとめるというふうにとられると困るのです。一声で勝負できなくとも、歌では一曲でいろんな勝負の仕方があることも知っておくのも大切です。
これは無限の表現の可能性のようにみえます。しかし、そこでは、限界を早く見極めたゆえの、工夫、へたをすれば割り切り、ごまかしにもなります。もとより虚を実に見せる世界ですから、その虚は問いません。
逆にいろいろとあるのは迷ったり、堂々めぐりすることになるので、まずは、一フレーズと言っているのです。