歌も芝居も、演じるというのは総合力です。一声だけで勝負は決まらないのです。しかし、一声だけで明らかに負けている場合はどうでしょう。
ミュージカルでも、テーマパークでも一声の違いで日本人と外国人は区別できました。長年、世界の声と比べてきた私には、ヴォイトレとは「まずは、その一声からの勝負を可能にする」ための世界です。今の若いトレーナーは、あまりにも意識していないようです。歌を一声でなく、総合的なステージで見ているからです。
海外では声の力は前提として確保されています。トレーナーはその使い方を応用度を高めるテクニカルな方へ導きます。特にマイクのあるポップスではそうなります。
日本も、歌手を目指す人は高音域が出ることばかりこだわるので、声のあて方のようなコツがヴォイトレのメインになりつつあります。トレーナー本人はよくても、その人に似たタイプしか教えられたことをコピーできていないのです。
本当に伝えられる声を目指す人は、私のところでも、基礎となる発声、技術を伝えられるソプラノやテノールにつきます。高いレベルを目指すなら最初からその方が早いです。
本当の問題は多くの場合、声域ではないからです。なのに、それをマスターすることが目的になっているのは、大きな間違いです。