ある能楽師の話です。「鼓というものは最初うまく鳴らない。手で打っていると、よい音が出るのに30年もかかる」しかし、「そのあともずっとよくなっていく」そうです。それを最初から無理に伸すと、板などで打つと、すぐに音が出るようになるのですが、長持ちしないそうです。発声も同じことに思います。
体からの声でも、調整としては部分的な障害として、力が入っているのを解決するのに、脱力、柔軟などをします。呼吸の扱いの向上が発声へ結びつきます。共鳴のイメージと共鳴の向上など、本一冊では述べられないくらいチェックポイントがあります。それは求めるレベルや人によって変わります。
姿勢を定め、固定し(下半身の力で支え、上半身のリラックス)、フレーズを短くすると、できたように感じます。しかし、そこで間をとらずに8フレーズくらいに伸ばすと、もう対応できません。「ハイ」でも説明した通りです。
歌やせりふで、バランスや間や流れが悪くなっているのに、「できた」とは言いません。メニュを使わなくても、1フレーズで、ゆっくりと短めにやればできていくのです。