一流に学べと言っていますが、名人の表現は、結果としてすごいから、ただ開く、聞き込むだけです。感覚に入れておくためで、直接の参考になりません。
弟子なら師匠、師匠はその師匠と、手本、見本とした代々の名人をくり返し聞いておくとよいでしょう。このときは目をつぶって入れておくのです。私のように眼をあけて客の心にも沿いながら聞くには、少し修行がいります。
そのまままねすることが、稽古では求められます。ヴォイトレでは、必ずしもそれはよくないです。「守破離」でいうと、名人は離反してしまっているのです。本人のもつ喉で絶妙なギリギリの表現をしています。声の延長上というよりは、それを超えてしまう破、飛躍してしまった離で、作品を提示しているのは、まねると危険でもあります。しかも、喉は必ずしも全盛期ほど柔軟でないため、名人級のテクニックでカバーをしているケースが多いです。