日本はメディアに主義主張の偏向のあってはならない、というおかしな国です。正確に内容を伝えるだけが報道である、ということです。そういう本来はありえない未熟なジャーナリズムには、ルックス本位の人の未熟な声が魅力的なのでしょう。
本当のことをいえば、発音トレーニングもいらないのです。口をはっきりと切り変えすぎるのはふしぜんです。アナウンサーが30代になり、朗読、詩吟などをやりたいなどということになると、先生に「素人より悪い」などと言われて、私のところによくきます。
何人ものアナウンサーをみてきましたが、役者のせりふやお笑いも噛み合いません。アナウンサーという職業病です。日常会話さえ、報道モードになる人も少なくありません
欧米では、一般の会話レベルは報道でなく、日本でいうところの演劇モードレベルです。アナウンサーは個性あるキャスターなのです。
表現の本質をわかって、声を伝えるようにした人が、キャスターとなり40代、50代と活躍しています。たとえば、国谷裕子さん、森田美由紀さんなど。
大竹まことさんのラジオ番組に出たとき、阿川佐和子さんに「役者の声は、もてますが、○○アナウンサーの声はどうですか」とふられ、「だめです。もてません」と答えたところ、阿川さんは「アナウンサーは。(句点)までしか読みませんが、役者はそこで切ったあとに、伝わらなくてはなりませんから…」というようなことを言っていました。「さすが」です。