私がもっとも楽譜の研究をしたのは、当初、プロへのヴォイトレを始めたときと、90年代初頭、グループレッスンの初期、すぐれたヴォーカリストの卵たちが集まってきたときです。ともに、歌唱力も発音も、音感、リズム感もすぐれている人を相手にしたからです。
その後は、声と耳を中心にヴォイトレをやってきたのですが、どうしても表現に関わらざるをえなくなりました。一般の人が多くなってきたからです。
そのときに、「これではよくない」というのをフィーリングだけで伝えても伝わりません。フィーリングは、プロならオリジナリティとして持っているのです。それはプロとしての活動実績に裏付けされ、ときに強固なものです。こちらも若いときは、実績では説得力に欠けます。
そこで、私は、説明の根拠を徹底して楽譜から探したのです。ことわっておきますが楽譜をみて歌を考えたのではなく、歌をみて、その説明に楽譜を使ったのです。ただの楽譜の記号ではなく、生きた音楽として、です。音大受験生のようなレベルで解釈するのでなく、表現としての曲の成り立ちと対応させていくのです。