私がレッスンで1フレーズにこだわるのは、人に何かを伝えるときには、1つの息で(ワンブレスで)すべてを表せるからです。歌も、それで一つのテーマを展開しているにすぎません。小説→詩→音楽と抽象度が高まります。
1つのフレーズで伝わることで、伝わる1フレーズのために、その前後があって確かに成り立つようにしているのです。成り立つためには、どこか1フレーズが、聞く人の心の奥に届かなくてはなりません。
音楽の表現は、リピートで効果を最大にしていくのです。
「一声がないのに(完全にコントロールできないのに)歌えない」、「1フレーズが定まらないのに1曲をどうこうしても、大してよくはならない」というのが私の根本的な考え方です。
何十人の曲から、もう一度聴きたい1フレーズを、ことばよりも声の伝わることで、チェックしてみてください。NHKのど自慢のチャンピオン大会でも、うまく歌う人はたくさんいますが、後で残る歌になっている人は、あまりいないでしょう。