私が一般向けのテキストをつくるときは、ことばの発声に加えて、声の使い方を入れています。ことばにならないところは、本では書けないために、CD付になるまで出せなかったのです。CD付きになっても、教材として、ことば、発音中心にせざるをえないのです。語学を、発音を聞かずに学ぶと、実際の会話になったときに通じないことと似ています。
最近は、定型である、あいさつことばを加えています。誰でも「おはようございます」と言っているのですが、どういうものが伝わるのかを学びます。同じことばに違いを出す、そこが声なのです。
もとい、芸事でも芝居でも、正しく間違えないで言えたかなどは問われません(間違ったら失敗です。言い直しが多ければ失格です。正しくいえることは前提です)。
どう言ったのか、どう伝わったのか、それを決めるのは、お客さんという勝負なのです。落語でも、100席ほど覚えて二つ目、真打になるにつれ、噺の数でなく、同じ噺を、いかに客に聞かせられるのかが問われます。
それには一つの噺を何百回も練習しなくてはいけないわけです。数をやればよいのではありません。他人のネタでやっても、自分の味で出さなくてはいけないのです。挨拶でも同じです。