自分の声を聞く。「そのなかに本物の声がある」とはいいません。この声は、思いとか言いたいことではなく、そのまま声という意味です。本物の声というとわかりにくい、誤解を招きやすいので、「あなたのど真ん中の声」と言います。
ピッチャーの投げる球のど真ん中は、ストライクゾーンの真ん中ということになりますが、私がいうのは、そのバッター個人のど真ん中、つまり、彼がもっともホームランにできるコースを示していると思ってください。
ですから、私は最初のレッスンでは、音の高さも声域、歌詞も、曲も全てを無視することもあります。
一声だけ、最もよく出せるところで、声というもの、発声と言うものを徹底して把握するようにしてきました。声を伸ばすだけで、そこに何ら感じられない人がどうして「本物の声」にたどり着けましょう。
声はトータルの1割と述べましたが、数秒の声一つで、ある瞬間には全てになります。1フレーズあれば、一流の歌手は感動させたり、魅力たっぷりに聞かせたりできるのです。