声が通るのは、相手にきれいに技がかかったような感覚でしょうか。多くのケースでは、そこまでにかなりの準備が必要です。心身がいつも動けるような柔軟な人は、ほとんどいません。
1日のなかで一番よい状態を知りましょう。まずはレッスンの場にそれをもってこられるようにします。そういうことができるようになると、これまでのマイナスからがゼロからになります。楽しくて笑っているような状態、これを指摘だけで、喜んでくれる人が多いのは、驚きであり意外なことです。
他のスクールのトレーナーなら、ここが目的、到達点です。その声でせりふ、歌でOK。声はOKだから、すぐに歌に入りましょう、できあがり、となるのです。
本当は、そこはゼロ地点です。そこから真っ直ぐ上に行くのはよくありません。しばらくは、根をきちんと深く伸ばすことです。個性の発現は迂回するようになっています。その回り道に味がある。それをおおらかに見過ごしてあげないと、よくてもトレーナーの二番煎じのような声と歌になります。本当に高いレベルに行かせたければ、トレーナーに必要なのは、指導より忍耐なのです。