声は声帯で息を音に変換するのだから、体の大きな筋肉の増強のプロセスとは異なります。舞台での肉体芸術ということでは、そこを支える心身に求められる条件は、アスリートたちに近いのです。ですからトレーニングにおいて、いつも与えられている刺激量よりも小さいというのでは、変化は期待できません。
「軽く弱く出す」ような発声のレッスンを否定しているわけではありません。それは、「重く強く出す」のよりもずっと難しいのです。誰でも軽く弱くは出せます。誰でも弱い球なら投げられます。しかし、軽く弱く、絶妙のコントロールなどというのは、重く強くを支えることのできる体から感覚を丁寧にしていかなくては、身につきません。通じるものにはならないのです。通じるものにするには、器を大きくする、支えをもっと大きくしなくてはいけないのです。