夢実現・目標達成のための考え方と心身声のトレーニング(旧:ヴォイストレーナーの選び方)

声、発声、聞くこと、ヴォイストレーニングに関心のある人に( 1本版は、https://infobvt.wordpress.com/ をご利用ください。)

分析の限界

私は、声のレッスンを科学的にも分析してきました。実験科学のようなものです。いくら何をやったから(方法)、こういう効果(結果)が出たといっても因果関係は証明できません。

 学会などでは「十数名に実験したところ、この方法を用いると半分以上の人がよくなった」というような発表を聞くことがあります。それは、その方法を用いなかった人と用いた人を比べるだけで、決して全員がよくなったということではないのです。また、それ以外の方法では、よくならなかったという比較もありません。つまり、どんな方法でもよくなったかもしれないのです。それよりも、サンプルがわずかに十数名で発表できるというのは悲しい。その母集団がどのくらいに一般化できるのか、(つまり属性、年齢や経歴…)という点だけでも疑問だらけです。これでは、単に「相対関係がありそうだ」「そういう傾向なのだ」ということにすぎません。データでなくてもわかっていることで、分析作業よりも、もっと前提とすべき大きな条件を問わなくてはいけないと、いつも思うのです。

 たとえば、「風邪で薬を飲んだら熱が下がりました」というのは因果関係でなく、相関関係としてのデータが当てはまっただけです。薬を飲んでなくても熱はいずれ下がります。そのために治験といって偽薬とその薬とを何人もの人に試し、効果を調べます。100人のうち、偽薬で30人、本物で60人に効果があったら、この薬は2倍も効くので有効とされます。一人の同じ症状のときに2通りの薬で試すことはできません。

ヴォイトレの効果では、もっと複雑な条件下で起こっています。それを参考にでなく、そのまま信じてしまう人の方が問題です。結果は自らのその後の歩みで出るからよいでしょう。何もしなくても10歩は歩けたはずなのに、早く3歩歩けたと大喜びする人が多いのです。トレーニングの残りの7歩や97歩がみえなくなってしまうのです。それをはっきりと示すのが、トレーナーの使命に思うのです。それは、数多くの人を長くみていくことと将来の予測を広くできなくてはいけません。そこへ挑んでいないとしたら残念なことに思います。ヴォイトレの結果に、「絶対」「100パーセント」「誰でも」は、ハイレベルになるほどないとしても、です。