トレーナーは、プロの前で歌っても、見本をまねさせるのでなく、その人の本質的なものを発見することです。相手が下手なら、まねさせる方が早いので、そういう教え方が多いのですが、まねても本当にはよくはなりません。
本人自身が、声の可能性に新たに気づくヴォイトレが必要になります。しかも、声から見た可能性となると、時間も手間もかかります。
今の歌唱を修正するのとは違うからです。その否定から始まるともいえます。表現と声との間に歌唱を新たに生み出す、プロといえども、今までの歌唱を一時、封印しないと次のレベルに行けないということです。大抵は、トレーナーも、声のなかで比較的よいところを残して、そのレベルに他をそろえることで終わってしまうものです。むしろ、プロの方が、声や歌の力以外を売り物としているので、そういう人には下手にみせないヴォイトレが中心になります。
声の要素別にみると、
1、高さ―もっとも出しやすい高さと、人によっては高音、低音でもっとも出しやすい2種類に分かれることもあります。
2、大きさ―これは長さでもって試すこともあります。厳密には異なるのですが、もっとも楽に伸ばせる大きさがあるはずです。高いレベルになるほど小さい声で長く伸ばせるようになります。
3、長さ―長く伸ばすほど粗がみえやすくなります。呼吸や共鳴のチェックにも使えます。
4、音色―声色、声の共鳴としてもっともよいもの、芯があって心地よく響くものを目指します。
1音「ハイ」でみるときと1フレーズ「アー」(母音のどれかでハミング)を伸ばしてみることもあります。この伸びは、長さと関係します。ビブラートが安定してかかっていること、無理にかけないことです。
5、発音―主に母音の中から選びます。子音やハミング、リップトリルからでも、よいものがあればかまいません。