自分を疑い続けているトレーナーには自信を与えますが、疑ったことのないトレーナーには、挫折から学んでもらいたいと思っています。早く挫折して欲しいので、ベテランの生徒や難しい生徒を混ぜたりします。うまくいかないところにこそ、その人の個性やよさも出てくるからです。
挫折や失敗のないトレーナーでは、人を育てられません。自分が学んでいるということは、より高いレベルのことが求められるようになることです。その分、失敗やうまくいかないことに必ずぶち当たるものです。誰でもよくする、すべてうまくできると言っているような人は、目標が低いか自己のやっていることの把握もできていないということです。だから続けられるということもありますが。
多くのトレーナーは、発声を学ぶときの挫折を経験に乗り越えたと言います。それでは、ただの自己PRになりかねません。ここで問うているのは、トレーナーとしての挫折のことです。
プロデューサーでオーディション対策というのなら、その人のもっともよいものをまとめ、よくないところをすべて省くでしょう。ですが、レッスンなら、悪いものをとことん出してもらうことが大切です。そこからよいレッスンになっていくと言っています。
レッスンは、最初からスムーズにいくとは限りません。目的を高く大きく変えていくなら挑戦であり冒険だからです。すぐにうまくいくようなのは、少しうまくなるくらい、私からみると、さして変わりがないのをよしとしているからです。順調で楽しかったレッスンも、あるとき、頭打ちになり、うまくいかなくなる。その先からが本当の学びなのです。早くそこまで行かせたいのです。