ときに、表現力をつけたいと言って来る人がいます。この場合、ベテランの人ほど変わるのは難しいことです。初心者は、一流のものを聞くこと、そこから力が引き出されるようにプログラムすれば、後は時間をかければよいのです。
しかし、ベテランは、それが終わったレベルに達していると、新しく入れるにも、入れ方から、気づきから学び直さなくては大して変わりません。よいものが相当に入っている人ほど難しい。そこでは自らを白紙にできるか、ということです。頭だけがベテランになっていて、力が伴っていない人は、さらに難しいことです。
表現力をもう少しつけたいというなら、技術の問題ですから、発声の基礎からやり直します。しかし、本当につけたいなら、これまでのキャリアや自信まで白紙にします。
これまでのうまくやれてきたことが、さらなる成長、可能性の追求を邪魔していると考えるくらいの覚悟が必要です。その覚悟があれば、そこまで高いレベルで気づけいているなら、最高のプログラムとして与えられます。そこから自分にないものを必死で入れ込みます。こういう人は、本当に稀です。ほとんどの人は、自分でやってきたことを取り戻し、確認できたら満足してしまえるのです。