ここに来る人のなかで、「養成所で、もっと大きく声を出すようにと指導されました」と言う人は少なからずいます。大きく出せるのに自分の考えや解釈で出していないなら、「大きく出せ」でよいのです。しかし、心身も含め、発声能力以上のものを求められても、出せないものを出させようとしているのなら、すぐには無理です。初歩的なところでは、メンタルの問題もあります。それを無理に変えようとして命じても、個別に心身も声の限界も違います。
大きな表現と大きな声を混同している人もたくさんいます。声の専門家でなくとも、指導者がことばを使えないのはよくありません。大きくも高くも、個別に限界がありますが、そこを伸ばすこともできます。そのエネルギーを集中して、ステージに使えるようにする、ダメ出しのレベル以上の応用に留めるというのが、早期にできる解決策です。
根本的に変えるには、これまでと異なるメニュでなく、異なる視座からのアプローチをします。低くとか小さく出すのは、高くとか大きく出すことよりもハイレベルなことです。今の発声の精度を上げることが、この問題解決の正攻法です。
