たかだか、ことばです。しかし、ことばの使い方一つで、トレーナーの熟練度がわかるものです。つまり、感覚や感性の鋭さは、ことばに出るのです。
例えば、「前に立てたろうそくの火を揺らさず、鼻につけたちり紙を揺らさず響かせる」みたいなのを、理想の型と伝えた人も、そう思った人もいました。共鳴の技としては、ワイングラスを割るようなもので、できる分にはよいでしょう。でも、本来の目的とは、違います。できなくてもあまり問題はないし、まともな一流の歌い手は、ろうそくも消すし、ちり紙も飛ばす、自由なのです。そもそもこれは、呼吸より共鳴の例えとみるべきです。