部分的問題を部分的な対処で取り上げていては、解決したようにみえても、また同じことが起きます。私は、マイナス―ゼロ間の悪循環と言っています。
それよりは、かつての発声を基に、そのときの最高のイメージに心身を合わせ、一声でもつかんで一つ深くすることです。そこで根本の声をつかめたなら、きっかけとなります。
日本では、本人もファンも、昔の音色やキィを望むのです。これは、昔を100として、そこへどこまで近づけるのか、昔の本人に似させるわけです。まねさせると言うのは、他人をまねるよりもましですが、100に戻せるとは限りません。
元より100の器で終わっていたのだから正しくトレーニングして200にしておけば、その50%しか使えなくても100になる、これが正攻法です。つまり、器を大きくしていくことで、古さ(年齢のことをバッテリーで例えると、こうしたシビアなことばになりますが)をカバーするだけでなく、もっとハイレベルにするということです。天然で、しぜんでできた壁を根本的なトレーニングで超えるということです。