トレーニングで出せる声以上のものは、ステージで出ません。しかし、スポーツなどと同様、観客のパワーやTPOでの集中力、テンションにおいて、ステージで大きく化けることがあります。練習では全力で、ステージでは人に伝わるように、よい意味で抑制がかかるのがしぜんに思います。
人前で化けられる能力がないと出てもいけないし、続けられません。その支えは、心身の強さになります。プロはそこをもっています。
ですから、プロになろうとする人がもっとも力を入れなくてはいけないのは、瞬発力のための心身の鍛錬です。 一言で言うとピークパフォーマンス、本番での強さです。そのためにトレーニングもまた過剰でなくてはならないのです。
声も力と同様に、ピークパフォーマンスで大きく働きます。テンションを上げて全力を振り絞ると、誰もが惹きつけられます。ここは人類のDNAに入った生命の力に近いところです。人知を超えた力の働くところといえます。
一大事のときに素人のあげた声が、プロの演じる声を超えることは稀なことではありません。赤ちゃんの一泣きで、役者の舞台は飛んでしまうこともあります。そのときは、早く通り過ぎることを祈るしかありません。
テンション頼みの声、ことば、歌、そういう非常時のような強制的な惹きつける力と、声、歌、演ずる力とを混同してはいけないということです。