NHKで水泳日本の復活を特集したTV番組がありました。そこで競泳日本代表の平井伯昌ヘッドコーチが、「(コーチとの)二人三脚は危ない、メダルを獲るのに選手もコーチも一緒になって力んでいる。傍から見ると、なぜ気づかないのかと思う」と言っていました。番組の主旨は、従来の専属コーチ制から組織として全員一団となったことが日本の勝利につながったという、日本人の好きな「絆での勝利」というまとめ方でした。
それはともかく、オリンピックで、世界でメダルを獲る一流の選手とそのコーチでさえ、コーチとのマンツーマンのクローズされた指導では、狭く近視的になるのです。スポーツであり、その中でも最も結果がクリアな種目、タイムレースの水泳でさえ、そうなのです。このことを、トレーナーは肝に銘じておくことです。
彼のことばでは、「優秀なコーチゆえに、見過ぎているために、ちょっとした変化を見落とすのは、よくある」ということです。
余談ですが、水泳では、経験のためにと、人数枠いっぱいの選手を連れていかずに、世界で戦える選手だけをタイムで選考して連れていくようにした、という厳しさ(30名枠で21人だけ連れていく)に、私は感じ入りました。
この番組で、故古橋廣之進氏の「『魚になれ』と言っていたが、速く泳ぐだけでは(人は)魚には敵わない」ということばも印象的でした。最も厳しく多くの練習をして世界記録を塗り替えて、会長として君臨した古橋氏が、高校教師にこの改革を託し、支えたというのも意外でした。