日本ではずっと、中央は京(京都、奈良)でした。近世になり、江戸(東京)になったわけです。江戸でも初期の頃の文芸は、井原西鶴の浮世草子、近松門左衛門の浄瑠璃など、上方のことば遣いでした。江戸、武士、男ことばなどは、荒っぽく粗野なイメージでした。
それが、江戸歌舞伎や洒落本を経て混合していき、19世紀の文化文政以降、滑稽本、人情本では、江戸語といってもよいほどの完成を遂げます。公家、僧侶から町人、庶民階級の人々のことばに変わっていくのです。
一方、大衆を相手にする語り口は、平家物語の頃から、ずっと受け継がれていきます。森岡健二氏によると、今の標準語が成立するまでのプロセスは次のようになります。
1.抄物(経文、漢語、古典の注釈)
2.江戸講義もの(漢字、国語)・説教(仏教)・道教(心学)
3.明治講義もの
4.演説