声の動きに、そこからこぼれてくるニュアンス、印象、余韻を、散る桜の花びらの舞いに例えたいと思います。そこに人間の力、いや、人が人を超えた力が働きます。歌があれば、声が、音楽の中のことばと溶け合うのです。私はその天使となれる日を夢見ていました。何十回か堪能させてもらっています。まずは私の心を射抜くものが出てくるところからです。その日のためにレッスンはあります。ステージで喝采を浴びるのは、私の手を離れたところで委ねています。
声の働き、動き、ため、艶、彩、空気の振動、これらは鼓膜だけでなく、体感、心の反応、心揺さぶる感動、甘美な世界への誘いとなりゆくのです。
一流プレイヤーとなると、ミューズをみるといいます。そういうレッスン、それを、私は声や歌で、マイクもないアカペラのステージで、レッスンの場として経験してきたと思います。一流のアーティストのように何度も、自分自身ではとり出せなかったものを、才能のある人に接する中で感じるのです。