歌をみるとき、次のスタンスでみます。1.悪いところを目立たなくする。2.よいところを目立たせる。2が基本で1が応用、2がトレーニングで1がリハーサル前です。
構成展開から入っていき、実力のある人なら声の置き方や呼吸を変化させて歌をブラッシュさせます。テンポやキィをその人の最大の力が出るところに合わせます。
腹から声が出ているような、喉が鉄でできているような外国人のシンガーが来たら、声の差は明らかです。それを音響、構成、声の統一性などで、客にはわからないようにするのが、日本のヴォイストレーニングに必要な条件かもしれません。ですから、注意も、口内のこと、軟口蓋をあげて、みけんや鼻腔に声を集めていくような部分的な事になるのです。
前に、森和彦氏の指摘を引用しました(私の著書では、リットーミュージックの「ヴォーカルトレーニング」「ヴォイストレーニング」「ヴォイストレーニングの全知識」に詳しい)。
スタンスの違いは、大きいです。日本のオペラが、一流の歌手を出せないのは、指導者がわかっていないためでしょうか。森氏は、山路一芳氏の師です。イタリアでは一般の人が出せるベルカントを日本の歌手が使えないのは、教養やテクニックの問題ではありません。もちろん、声楽家は使えているのですから。
表現に対し、自然にありのままに自らの声を鍛えているかです。それをなくして発声や音響のテクニックでカバーしようとしているからです。