夢実現・目標達成のための考え方と心身声のトレーニング(旧:ヴォイストレーナーの選び方)

声、発声、聞くこと、ヴォイストレーニングに関心のある人に( 1本版は、https://infobvt.wordpress.com/ をご利用ください。)

パフォーマンスとしてのレッスン

 応用、演出にすぐれたトレーナーは、それはそれで使いようがあります。「こうして、こうすれば声が出るでしょう」と、人気のあるパーソナルトレーナー(多くはフィジカルトレーナーを指す)もそうですね。5分でウエストがくびれるとか、バストが大きくなるとか、それは嘘ではありませんが、真実ではありません。とはいえ、TVに出るほどのパーソナルトレーナーは、それを知ってパフォーマンスとしてやっているのでしょうが…。それをまねているだけでバックの基本のないトレーナーは、早々にいなくなるでしょう。

 大切なのは、それが将来相手の大きな可能性につながるようにしているかです。演出してみせるのは、入り口としてはいいのですが、入り口から先がない、そのために、いつも入り口だけで終わっているケースが多いのです。フィジカルでは若いトレーナーに多いのですが、ヴォイストレーナーでは、ベテランにも少なくありません。役者や演出家のワークショップにもよくみられます。この入り口を出口、目的とし、セッティングしてみせると、一日でみるみる上達するような、実感のするセミナーになるからです。

 

PS.「インチキな人は、有名人を宣伝に出す」とTVで流れていました。有名人が自分でPRするのはかまいませんが、私たちの方から、こんな人がきていますというのをPRしません。実績を上げていたら紹介で人はきます。即効果を求めていらっしゃる人は、本当はトレーニングの対象にはなりにくいものです。お医者さんの紹介で、本当に困っている人がきます。少しずつよくなっていくのをみると、急いで成果を求めてはいけないと思います。

入り口の先

 レッスンは、イベントではありません。トレーナーのパフォーマンスをみせるところではないのです。とはいえ、私の声を聞きたいなら、レクチャーにいつでもくればよいと、機会はオープンにしています。声はごまかせません。

 話やパフォーマンスでみせなくても、基本は、声そのものです。声は声として発したらわかるものです。シンプルに示せばよいだけです。ですから、私も声は出します。しかし、本当は生徒の声だけにレッスンの時間が費やされ、私が無言なのがベストのレッスンです。そんなことがわからない時代になってきたと感じます。

 

静かなレッスン

 レクチャーや一般向けのワークショップでは、基本とともに基本の応用を、それがなぜ必要とか、それを行なえばどうなるのかの説明が求められることがよくあります。個人レッスンでも最近はその傾向が強いです。私のところもそこで1万件のQ&Aを公開しています。

 それは、レッスンが質疑応答で終わってはいけないからです。私が言語化して、文章で伝えること、会報や本で公開するのは、レッスンで、声だけ、あとは無言、無音で進めたいからです。ですから、これを読んでいる人は、レッスンでは質問にくるのでなく、静かに淡々と自分の声に集中する時間を大切にしてほしいと思っています。大切なのは説明でなく、本人の気づきです。変化、感覚、体の育成です。

 表面上の効果を急ぐ人が多いので、サービス精神旺盛なトレーナーは、そこでのわかりやすい説明で相手を納得させる方向にレッスンをプログラミングします。

私は、本や会報をその役割に使ってきたので、レッスンでは静かです。本ではていねいなのにレッスンでは教えてくれないと思われたら本望です。レッスンは個別対応ですから、その人の人生の時間軸、空間軸から捉えていくので、そんなに簡単にアドバイスできません。

 その場を(つまり相手を別の思惑で)満足させるアドバイスはできますが、あえて避けます。ここのトレーナーも競争意識や親切心など、生徒のためにたくさん話すようになると、私はたまに釘を刺します。

表現と基本

 表現と基本ついて、私は、いつもヴォイトレの念頭において考えてきました。まとめたのを音楽之友社から発刊しました。ここでは、緻密に述べてみたいと思います。

 

 一つのトレーニングをていねいに説明すると、これは何に根ざしていて、という基本と、これは何に使えて何になるという応用が入ってきます。本を書いてりレクチャーしたのが、そのために役立ちました。

 それを「その場での修正」と「長期的な改良」の違いとみます。一軍の試合の監督の采配と、二軍でのトレーニングコーチのように、対象も目的も役割も違うということです。

 プロデューサー、演出家と、医者やパーソナルトレーナーは、同じ相手に対しても違う視点でみています。それぞれの目的、レベルの設定をしているのです。ヴォイストレーナーは、それらを全て兼ねることもあります。とはいえ出身やレッスン目的により、おのずと偏ります。私のところでは、私が 基本の基本と応用(の応用)をみて、基本をトレーナーに振り分けています。ときに、即時対応(本番、舞台やオーディションなど)にも応じなくてはいけませんが、そこに焦点を当てると本当の意味で高いレベルに、人は育たないのです。

 トレーナーには、声の基本、共鳴―発声―呼吸、つまり、声づくり、体づくり、感覚づくりをメインに取り組んでもらっています。一人のトレーナーでは徹底してできないことも分業体制で、それぞれに専念できるようにしています。トレーナーも専門別に細かな役割分担をさせるときもあります。

 

絞り込みと集中

 いろんな人の歌唱タイプを挙げました。どれになろうか、どれかになろうと悩まなくてよいです。どれもが一人のなかに混在しています。可能性をていねいにみつめ、最大に取り出せるものを選びます。変えたり、組み合わせたりすればよいのです。

 一流の人が100%使っていて、私たちが10%しか使っていないのではないのです。一流の人は自らのなすことを知り、そこに最大に集中しています。それがどういうことか学んでいけばよいということです。

自分を変えたり脱したりするのは、自分の限界を知ってからでよいのです。知るためには行動すること、壁にぶつかること、悩んで考えること、そのくりかえししかないのです。

 大きな世界を目指したり、才能をもっている人ほど大きく悩んでいます。自分のことでも悩んでいます。それでよいのです。

カウンセリング

手法が希望をもたらすことで効果をあげるのは、カウンセリングに通じます。そういう名で呼ばなくとも、レッスンのなかでトレーナーと話すことの大半はカウンセリングと、結果としてなっているのです)。

 トレーナーには

1.経験がある

2.自信がある

3.ことばや伝える手段がある

 ことばは、とても大切です。

 トレーナーの大半は歌唱芸術家ですが、研究所ではことばで話しかけ、メールで励ましています。

 

「うつ」という症状が一般化しました。このことばのひびきがよくありません。「う」「つ」と、行き詰まった感じです。「アタ病」「オト病」「エテ病」「イチ病」では、だいぶよくしが変わるでしょう。

 

声の出にくい人は、性格や考え方を見直してみましょう。すぐに変える必要はありません。変わらなくてもかまいません。自分と向かい合う時間と自覚を強くもつことです。今がダメで、次に急ぐのではなく、今は今でよしとして、次に行けたら行く、というのでよいのです。

前向きな姿勢が最大の薬

 わがままと個性、くせと個性をわけるのは、難しいことです。専門家といっても、本当の専門家は、何をもってどう示すのかも難問です。声がよいからヴォイストレーナーとして優秀とはいえないでしょう。トレーナーの判断と自分の判断にどう折り合いをつけるのかは、難しい問題です。

 でも折り合いを付けなくてもよいのです。全てを受け入れつつ、よいところを活かしていく、どこまでも前向きな姿勢こそが何よりも大切なのです。

 将来に目標を持つ、目的を立ててそこに歩むこと以上に、よい薬はないのです。

 科学的手法について、私はかなりの情報を集めています。しかそ安易に使うのではありません。

ここに訪れる人やその人が通うところの情報を知っていることで相手や担当するトレーナーに安心を与えられることのほうが大きいのです。

体と心と声

 私は「方法とメニュでなく、基準と材料を与える」と言ってきました。息や声は一時、表現から切り離して、体中心に理想に整える。息吐きなどで条件をつくる、鍛えるということです。

英語を話すのに息を強く吐くトレーニングをしていたら、バカのようにみえるでしょうか。私はそこからヴォイトレととらえているのです。 

ですから、ヴォイトレでは

1.フィジカル、表情、しぐさ

2.メンタル、心、感情

を同時に扱っていきます。スピーチやプレゼンテーションでの疑問点や相違点もわかりやすくなるでしょう。

 

 プロは身内でなく、第三者(初めて会う人)に通じる力、プロが(ほかの分野のプロも)認める力が必要といえるかもしれません。

 フィジカルでも、脳科学を使った方法で、画期的にうつ病認知症などが治ったという事例がたくさん出てきています。しかし、かつてのロボトミー脳梁で左右脳を分離する手術、後遺症が出て→失敗)などと同じで、誰かに一時、プラスであっても、一般化については、短期的にみて、すぐに肯定してよいものではありません。

研究や実験は大切です。それで進歩していくところもあります。しかし、客観的な評価ができると限らない分野もあります。科学的という売りに振り回される人が少なくないのは、どの分野も同じです。試みにすぎないのに、理論・理屈や検査で安心したいのです。人より機械やコンピュータ、実の声よりも理論を信じるようになってきたのです。どんな体験談も検査値も、必ずしも自分に当てはまるものではないことを知っておくことです。

 医者(他人)を信頼するだけで、かなりのことはよくなるのは確かです。医者やトレーナーを頭から疑ったり、比べて欠点ばかりをあげつらうのは、本人の成長のためにはお勧めできません。

 その人の性格や考え方が、その人をつくってきているのです。一時、少なくともレッスンでは、我というものを離してみることです。他人のように自分を眺められるようになることが大切です。そのことが芸を高める条件でさえあるのです。

 

気づきと補充

いっぺんにすべてのことを行なおうとするとわかりにくくなります。ピアノの初心者なら、すぐ弾くのではなく譜面読みや指の運動を、別々にトレーニングした方がよいのです。

結果というと先のほうにばかり気がいきます。そこで直そうとして直せるくらいなら、すでにすぐに直っています。直っていないケースでは、もっと根本の問題に気づき、改めなくてはならないのです。改めるというと、正しく直すように思われがちですが、多くは不足しているものを補うことです。入っていないものを入れること、気づいていないことに気づくこと、そこから、感覚を変え、体を変えていくのです。体を変えていくこととは、感覚を変えていくことでもあります。

 歌でいうと、音感(音高や音程)やリズム感のよくない人には、間違ったところを正しい音やリズムに直すのでなく、気づかせること(気づく能力をつける)です。次に気づいたことを自らやり直し、正すことです。これを一人でできないから、トレーナーが指導したり、判断をするのです。しかし、教えるのではなく、一人で発見して矯正できるようにしなくては意味がありません。

 トレーナーは正誤の判断をするのではありません。その人の判断のレベルを判断することです。7音の曲を5音で捉えている人には、2つの音の存在を気づかせなくてはなりません。そのときに2つの音だけ教えて出させたところでは直りません。

 リズムを間違う人は、一定のテンポを正しくキープできません。テンポなしに正確なリズムは刻めません。トレーナーは、その人の大まかな、あいまいな、だらしないところを(プロのレベルからみて)判断の基準そのものを高めていきます。きめ細かく、ていねいで厳密な判断ができるようにしていくのです。

英語とヴォイトレ

 英語でなく英会話が苦手という人も、これに通じます。外国人とうまく話せない人は、外国語力だけでなく、外国に接していない、慣れていないことが大きいのです。メンタル面の自信のなさが、フィジカルに影響して、実力を発揮できないのです。

英会話学校の体験レッスンで初回は全くできないのが、4、5回でそれなりに話せるとなれば、英会話力でなく、慣れによって変わったのです。

 話し方や内容を学ぶよりも、人前に立って話すことで舞台慣れをさせていくほうが効率的なのです。これは人前で行なうことには共通のことでしょう。

 

 「英語耳ヴォイトレ」の執筆のときに、改めて英語でのコミュニケーションは音声の力に大きく依存することを確認します。特にヒアリング(リスニング)と発音といった、発声、呼吸に関わるところには、準備が必要な人が少なくないことに気づきました。外国人の前で外国語でというまえに、人前で大きい声を出せるか、強く息を吐けるかということです。

ピークパフォーマンスとレッスン

 基礎と応用、練習と本番を結びつけておくこと、これを常に考えてレッスンをするのが大切です。

 基礎のレッスンと即興のレッスンを比較しました。いつでも、もっともよいところのみで状態を取り出すこと(ピークパフォーマンス)は、メンタルトレーナーの専門です。スポーツや歌など人前で演じるアートでは、一つの分野といってよいほど、大きな課題なのです。

 誰にもメンタル面で落ち込むことはあります。うつ病は100万人で、国民病といわれるくらい社会問題です。意欲、モチベーションなどが関わるからです。

日本だけではなく先進国では一般的なことですが、日本ほどひどくありません。先日、いきなり何百人ものまえで話せといわれたシチュエーションで、外国人と日本人との比較(心拍数)実験がTVで流れていました。日本人の結果は、最低でした。

トレーナーの条件話し方の先生を例に

 「話」となるとどうでしょう。話し方教室と比べてみます。

1.リラックス、緊張緩和、あがり防止

2.スピーチやプレゼンテーション、音声コミュニケーションの技術(パフォーマンス)

3.話の構成、内容、意味(ここは、文章で起こしてもわかる部分)

 

 声もせりふや歌のように使うところは、「話」と共通します。誰でも話せるし歌えるのです。そこに立ち返るのなら、より話せるより歌えるように、という比較の問題です。

1.(外部)うまい人と比べる

2.(内部)前の自分と比べる

 この2つの軸で比べます。それとともに、プロの条件として、コンスタントにその力を発揮するということです。そこを再現性、耐久力など目標にするとわかりやすいでしょう。

 

 スピーチ、面接、司会など人前であがりやすい人なら、心身のリラックスが問題となります。プロでも状態が未知数であったり、状態が不安(体調不良、準備不足)であれば、同じようなことが起こりやすいです。それが外にわかるかということのほうが現実としては問題です。

 次の2つを踏まえておくことになります。

1.状況

2.状態

「500人の前で話してもあがりません」ということなら、500人の前で話す機会を与えて場慣れをしたらよいのです。経験を重ねることで自信をつけさせるのは、恐怖症の克服と同じくとても有効です。