与えた100を100以上に使える人は少ないものです。うまくいく人たちは1割を10倍にして使っています。つまり、私が1万円渡しても、1000円くらいにしか使っていない人もいれば、1万円として使う人も、10万円や100万円にしている人もいるということです。
レッスン料として、30分で何コマというのは、代金に過ぎません。レッスンの時間や回数と料金にとてもこだわる人もいます。サービスに見合う価格設定という、世の習わしに即しているものの、本来、学びの場に金額はつけられません。何億円にも比べられない、無限の価値にもっていった人もいれば、払った分だけ得たという人もいるし、なかには払った分、損したという人もいるでしょう。
今の消費者主体の世の中、商品やサービスに関しての考え方は、芸事に関しては受難の時代といえます。評価の定められるものに対して、厳しい意見は貴重です。しかし、芸事ではそういう基準もなくなり、敢えて厳しいことばを投げる人がいなくなりました。ほとんど誰もが「いいね」を押してくれるのです。
会社で上司が部下を育てられなくなった。部下に媚びるばかり、叱ることができない。家庭で親が子供を育てられなくなった。これも同じです。
好き嫌いでなく、芸がすぐれているかでみなくてはいけない世界で、好きでしか選ばない、嫌いなものや人には接しない、というのでは浅いレベルでしかならないのです。嫌う人にも有無を言わさないのが、芸の力です。