夢実現・目標達成のための考え方と心身声のトレーニング(旧:ヴォイストレーナーの選び方)

声、発声、聞くこと、ヴォイストレーニングに関心のある人に( 1本版は、https://infobvt.wordpress.com/ をご利用ください。)

腹式呼吸を例に

 一流のレッスンとトレーニングは、一流に目的レベルをセットしたものです。しかし、一般の人でも、一般向けのトレーニングや初心者用トレーニングを行うよりも、私は最初から一流に、ハイレベルにセットすることを勧めてきました。

 基本の体―呼吸―発声―共鳴(母音、子音)などを、一般レベルでみると、逆にわかりにくいからです。腹式呼吸は、一般の人でも、およそできています。これを横隔膜呼吸などと、名称や定義を変えても、科学的に理論的に説明しても、本質から離れるだけです。

 本質は、直感的に腹から声を出していると周りもわかる声になっていることです。お腹から声が出せている人と出ていない人がいるというのは、明確な差として、現場での感覚、イメージで捉えられています。

 「軟口蓋を開ける」「助骨を開く」というようなアプローチは、レッスンで好んで使われる表現です。本などで、読んで知っていることでしょう。そういうことも本当のベースが伝えられていないのです。それは、頭では知らなくてもよいからです。

レーニングで、意識して、自覚して体から動いていないから、トレーナーが注意するのです。腹式の呼吸ができていないと、肩や胸が動き、発声の安定がよくならない、それは理屈です。呼吸からやり直し、とトレーナーは言うのです。

プランニング

 プランニングとは、その名の通り、計画ということです。

1.モデルの選択、把握、目的をおく。レベル―ある人物(→作品→歌唱→声)を想定する。

2.現実を把握、分析する。自分に欠けているものを知る。

3.アイデア、ギャップを埋めるアイデアを出す。

4.プランニングする。アイデアを入れ、スケジュールにする。

5.トレーニングを実行する。TO DOリスト(today)の厳守。

 

 アドバイスとしては、周りの人(大体、自分と同じレベルの人)と同じことをしないことです。そして、一流の人の頭で考えられるようにしていくことです。そういう人にアドバイスを求めてチェックすることです。

 ここがわからないと大して効果はありません。

レッスンに通うのでなく、レッスンで変わることが大切です。大した効果が出ないようにみえたら、出るまで続けていくのです。通っているだけでなく、変えていくことです。環境と習慣の方を変えるのです。

 すぐにできるなら、レッスンもトレーニングも必要ありません。毎日、走らない人が、いつかマラソンに出て完走することはありません。

 アーティストは、自らのルールを決めています。声や歌を考えるためのツール、アーティストやプロになるのに役立つツールはあります。

全体と個

 それでは、個人の問題として、声を強化したり変えるには、どうしたらよいでしょう。

 たとえば、「黒人は足が早い」という現実を目にして、彼らに勝ちたいと思ったら、何をしますか。

 欧米人が考えるのは、まず「ルールを(自分に有利に)変える」、次に「本番の場を変える」。スポーツでは日本人選手も、これでハンディを負わされ、潰されてきました。ビジネスでは、もっと悪条件を与えられました。しかし、そのことで、相手よりも努力して優れていったのです。

さらに「ヘッドハンティング」があります。これはプロデューサーの仕事です。たとえば、海外から優れたものを持ってくるだけでも、日本でヒットさせられるのです。

 最後にようやく、彼らを分析して、それと同じように育てようとなります。

 一流の人と自分を書き出し、比較し、分析してください。

 研究所では、現場での習慣と環境を与えようとしました。ピアニストなら、音源と楽譜とピアノ、バレリーナならDVDとスタジオ。私のところでは音源とスタジオとなるでしょうか。防音スタジオも環境の一つです。優れた人のデータを入手し、体や感覚のギャップを補うメニュを与えます。

人生や仕事での成功の秘訣は、時間をかけて組み立てることです。私は、成功ということばを使うときは、用心しています。

 要領よく、てっとり早くやりたいということに焦点を合わせていると、最終的にはそうなりません。具体的なようで、実のところ、あいまいだからです。優れた人になるために、優れた人とのギャップをみて、具体的に埋めることです。

外国人のトレーナー

 海外のヴォイストレーナーについた日本人が、ほとんど実質上の効果をあげていないのは、どうしてかと聞かれたことが何度かあります。本人に効果をあったと思わせるようにセットしている点は、ワークショップと似ています。そもそも、トレーニングというのは1回や2回、1日や2日で変わるものではありません。著名なトレーナーほど、そこにはハイレベルで条件の整った人が来るのですから、なおさらです。条件にふれず、状態を状況で改善しているのです。

 私は多くの外国人トレーナーと会いました。ここに招いてレッスンを引き受けてもらった人は相当な数です。ハイレベルなトレーナーほど声質だけをみるので困るのです。オーディションにおけるプロデューサーと同じです。それでは、自ずと声の繊細な調整となります。バランスの良さを重要視しますから、結果として、カラオケの先生の指導のようになってしまいます。それはチューニングで、楽器作りではありません。

 一流を育てている外国人のトレーナーは、日本人特有のくせを解せず、喉をより締めることにもなることも少なくありません。向こうでは通じるやり方では通じないのでリラックス状態を中心にした、メンタルトレーニングに移しているのです。

 私は彼らに、声を褒められたので、悪くは言いませんが。コミュニケーションを中心にして、褒めること、リップサービスは、日本のトレーナーも見習っているようです。そうして音楽に関わっているもの同士のコミュニケーションの手段や場のように、レッスンがなってしまうのです。

その状況は、あまり好ましくありません。「欧米に習え」の時代を思い出します。まだまだ彼らと対等になれていない悔しさを感じます。

 真のレッスンなら、ぶつかって当たり前です。反論する人もいない。トレーナーがどうも、そういう肩書に接し、形としてのキャリアをもらうことに払っているようです。

 学びに行っていると、効果が出るはずなのに、私の知るところ、海外に習いに行った人はたくさんいて、本当によくなった人は、ほとんどいません。歌がよくなったという人はいますが、声、ヴォイトレのトレーナーがあげている、育てた人リストなどは、声や歌では活躍できていない有名人です。実績はほとんどありません。

養成所時代

 どのトレーニングも、大きな効果を早く求めるとなると、個別に(人によって)どれくらいを、どのペースでやるのかを、丁寧に扱う必要があります。大きな効果と、早く出る効果は違います。

 私自身、最初は一般の人にもかなり大きく目標を与えてきたと思います。体育会系のように「毎日10キロ走れ」と言うようなことです。こうすると、条件に恵まれた人は、ついてこられますが、それに劣る人は、努力しないと、あきらめざるを得なくなるのです。当時は平均年齢20代前半、しかもプロ志向が強い人ばかりでした。劇団の養成所の厳しさからみたら、私のところなどは甘いところでしたが、声について、厳しかったのです。

 

 レッスンは私と対するのでなく、一流のアーティストの音源に対して挑ませました。トレーナーがアーティストの才能を潰してはいけない。それゆえ、一流のアーティストとストレートに対させることしかないのです。そのときは、私はいないわけにもいかないのですが、できるだけ、無となることが必要でした。

 

 私のグループレッスンは音源を聴いて、そのフレーズでのアプローチ、そことオリジナルの創造をメインとしていました(そんなレッスンだけができたのが、1990年代の半ばまででした)。

 個人レッスンでは、ピアノの音にのせて声でのアプローチです。話はしません。自分の声、それを通しての体や感覚に、一心集中して、何か変化の生じるのを感じて欲しいからです。

 

プロがプロに行うレッスンは、プロが一般の人(お客さん)に行うレッスンとは、目的もレベルも全く違います。ヴォイトレのワークショップでは、一般の人の心身をほぐし、リラックス、楽しさ、コミュニケーションの力での発声、メンタルの改善が中心にあります。私は、これを「マッサージ効果」と言っています。

 それに対して本当のレッスンは、厳しく孤独に、緊張を強いられます。そこでコツコツと重ねていくので静かなのです。

状態を使い方で変えるヴォイトレの盲点

 私は、声の弱者のためにメンタルとフィジカルの勉強をしました。これは、声の強者の基礎づくりのために、最初はアプローチしていたものです。

1.体と感覚の条件の違い―鍛え方でフォローする。

2.体と感覚の状態の違い―使い方でフォローする。

1は、どっぷりと日常のなかに入っています。そこでレッスンとなると、どうしても、2が中心になります。体や呼吸を使うというのは、難しいのですが(使えているなら使っているので)、軟口蓋をあげるとか、顎を引くなどの方法は、わかりやすいからです。声楽的な教えでは、そうなりがちです。でも軟口蓋を上げてもどこかで限界でしょう。これで1、2音高い声が出るようになったり、軽く響きやすくなったり、変わるところまで行い、そういう面をチェックするのです。

 このとき、よくなった面を、トレーナーは指摘しますが、実のところ、それによって、よくなくなっている面もあるのです。それを同時に知らせることやカバーすることはできないと思います。多くのトレーナーが気がついていないこと、そこが問題なのです。

 何も言えない理由にこだわり、気にしてしまうと、悪くなることがあります。しかし、相手をみて、よし悪し、両方について伝えるように努めています。

 一つのレッスンやトレーニングは、大きな目標を遂げるために、ある小さな目的や時期に対してあります。それは優先度や重要度において、全く違います。そこで優先する目的だけしかみないでやることで、ある面においてデメリットが生じ、大きなリスクがあるのです。

一流への基礎づくり

 海外での経験が先であった私は、研究所でも、世界の一流のアーティストが鍛えられ、成立するレッスンやトレーニングというのを、常に念頭において考えてきました。それを実際に海外のトレーナーやアーティストと試みたこともあります。

 そういう体や感覚をもっている人は、その場でできます。そこで、私が一番感じたことは、欧米、いや今やアジアも加えて世界と、日本との、声の質感、声量の差だったのです。

 これは、テーマパークの催しものやミュージカルでさえ、外国人の出演者の声を聞いたら、直に感じることです。歌は、音響技術でカバーはできますが、声のインパクトや個性の差は、埋まりません。

 研究所には、ハーフやクォーターの人、帰国子女もいます。日本に染まっていない人ほど日本人でも声が出ます。歌謡界での、韓国勢の力をみてもわかるでしょう。今始まったことではありません。昔からです。スポーツも同じです。立場上、本人の努力も並ならないものとは思いますが。

 世界の一流のアーティストが来て、対応できるレッスンやトレーニングをセッティングすること。一流を超えるものを想って、あらゆるものを考えていたのです。そうなるほど、メニュが基本の基本に戻るのは、どの世界も同じです。

 

条件改良のための高目標

 私は、ヴォイトレも、マラソンの例えでいうと、オリンピックに出るか、かつよい成績で完走できるか、など、具体的な目的を設定するとよいと考えています。今のあなたからみて非日常的なものにしたいと思います。それを遂げたらすごいけれど、遂げられなくても多くは問題ないでしょう。高い目的を持った方が、結果として条件改良を強いられ、早く向上できます。

 日本人は、まじめでいけません。「それは無理だと思います」「そこまで望んでいません」という人が多いのです。そんなことはわかっています。

 万に一つもあなたはオリンピックに出られません。でも、そのレベルの設定で行うからこそ、日常から変わってくるのです。市民マラソン完走したいのなら、それを目的にするよりもオリンピックを目的にする方が、ずっと早く、確実に成し遂げられる可能性が高まるということです。

 高めに、できるだけ具体的に目的をとりましょう。

1.世界の一流を超える(オリンピックの金メダル)。

2.世界の一流と並ぶ(オリンピックに出場)。

なら、日本で通じる選手になれる可能性がずっと高まります。

 

目標をMAXにしてから整えていく

 走りたいならマラソンのレースに出る、マラソンに出たいなら、オリンピックに出る、そのように目的をレベルアップして必要性をあげるとよいでしょう。すると、効果もすぐには出ませんが、出るとすぐわかるほどになるのです。日常を非日常化させてこそ、非日常が日常化していきハイレベルになるのです。その結果、条件が変わり、身につき、はっきりするということです。

 日々にやっていることをくり返すだけでなく、次のステップにしていくことです。

 マッサージして状態がよくなってそれでよいと思うか、ハードなトレーニングのフォローとしてマッサージを使うのかくらい違うのです。マッサージを否定しているわけではありません。日常生活で、階段50段上って疲れたからとマッサージを使うより、5キロ、10キロと少しずつ長く走って、無理を起こさないように使うということです。そこでステップアップのためにいろんなメニュを使った方がよいと思いませんか。ハイレベルに問わないと、声などは本当の効果がわかりにくいのです。

 

非日常化のためのトレーニング

 トレーニングが真にトレーニングといえるものなら、それによって明らかに、体や感覚が変わり、結果、ヴォイトレなら声が変わるものです。

日常のなかで、よく眠ったり心身が活性化されたりしたら出るくらいの声を目的にとると、声の出方で自分の体調などわかってくるでしょう。つまり体調が悪いと、声もひどくなるわけです。それが少し悪くても感じられるようになっていくわけです。そうして声に対する感度が上がるのはよいことです。しかし、それはトレーニングの前提であってトレーニングとは違うと思いませんか。

 たとえば、入院して療養する患者さんへのヴォイトレ効果―ヴォイトレしなくとも、気力、体力が回復してくると人並みの声が出るから、そこまではトレーニングの効果ではないのです。

声が機能的に出ないところでのアプローチやメンタルケアが、ヴォイトレのメインになっていることが多くなりました。病後の声に悩みのある人のリハビリと同じです。そこはST(スピーチセラピスト)の仕事です。歩く―走る、という日常のことを、話す―歌う、に例えてみました。

 

レッスンとトレーニングの異なる次元

 走ることを目的としていても、1.オリンピックで勝ちたい、2.マラソンを完走したい、では、求めるレベルが違います。1はスポーツ選手レベル、2はアマチュア選手レベルとします。そこに30分、5千歩も歩いたら、足がパンパンという人がいたとします。これを3.一般の人レベルとします。

 一般の人が医者やマッサージや整体に行ったからといって、どうなりますか。疲れはとれて楽になります。しかし、2、3カ月後に、2、3キロも走ったら、また同じことでしょう。

 毎日のトレーニングで鍛えて条件を変えていかない限り変わらないのです。1と2と3には、求められるレベルとして日々行うことに雲泥の差があります。

 ヴォイトレも同じです。習いに行って、リラックスしたり、発声法を変えて、その日に、よく声が出たからといって、発声が身についたわけでも、基本が身についたわけでもないのです。何も変わっていないのです。

 私自身、そういう見せ方も、一日セミナーでは使っていましたから、よくわかります。使い方を少し変えて状態をよくして声をとり出してあげると、皆、喜んでくれます。これだけでは、条件のどれ1つ、変わっていないのです。

 

調整とトレーニング

 研究所には、お医者さんの紹介からもいらしています。ポリープ、声帯結節などは治療します。手術すればすぐによくなるものもあります。しかし、そのままでは再発する可能性が高いなら、ヴォイトレすることでしょう。

 他の人と同じ練習をしていて、自分だけなったというのなら、発声法や体質や環境、習慣などに問題があるといえます。同じ練習や同じ生活をしていると、再発しやすいです。

 5時間、声を張り上げて、声が枯れたら休んでも、今度は1時間、声を張り上げたら同じようになるのです。カラオケポリープも同じです。たまにしか歌わないから悪化しないだけです。整体やマッサージでほぐしても、元々の楽器や使い方に無理があるので、そこを改めなくてはなりません。

 喉の状態の調整では、しばらくの間の改善だけでしかないのです。いきつくところ、自分の器を知って、それ以上、ハードに使わないようにしようとなります。これまでよりも、ハードに使いたいのに使えない人は、どうするのかということです。

 使い方で負担をかけないためのレッスンが多いのですが、必要なのは、負担がかかっても耐えられるようになるトレーニングです。

 そのことがわかっていないのが、ヴォイトレの一番の問題です。この2つは似ているようで全く異なるものです。

 歌手や役者、声優、芸人のように、高いレベルで、強い声、タフな声を要求されているなら、調整は、準備体操にすぎないのです。声が弱い人がヴォイトレに頼ろうとするときに、発声法や呼吸法の問題と勘違いをしてしまいます。柔軟体操や準備体操ですべて解決すると考えているようなものでしょう。