どのトレーニングも、大きな効果を早く求めるとなると、個別に(人によって)どれくらいを、どのペースでやるのかを、丁寧に扱う必要があります。大きな効果と、早く出る効果は違います。
私自身、最初は一般の人にもかなり大きく目標を与えてきたと思います。体育会系のように「毎日10キロ走れ」と言うようなことです。こうすると、条件に恵まれた人は、ついてこられますが、それに劣る人は、努力しないと、あきらめざるを得なくなるのです。当時は平均年齢20代前半、しかもプロ志向が強い人ばかりでした。劇団の養成所の厳しさからみたら、私のところなどは甘いところでしたが、声について、厳しかったのです。
レッスンは私と対するのでなく、一流のアーティストの音源に対して挑ませました。トレーナーがアーティストの才能を潰してはいけない。それゆえ、一流のアーティストとストレートに対させることしかないのです。そのときは、私はいないわけにもいかないのですが、できるだけ、無となることが必要でした。
私のグループレッスンは音源を聴いて、そのフレーズでのアプローチ、そことオリジナルの創造をメインとしていました(そんなレッスンだけができたのが、1990年代の半ばまででした)。
個人レッスンでは、ピアノの音にのせて声でのアプローチです。話はしません。自分の声、それを通しての体や感覚に、一心集中して、何か変化の生じるのを感じて欲しいからです。
プロがプロに行うレッスンは、プロが一般の人(お客さん)に行うレッスンとは、目的もレベルも全く違います。ヴォイトレのワークショップでは、一般の人の心身をほぐし、リラックス、楽しさ、コミュニケーションの力での発声、メンタルの改善が中心にあります。私は、これを「マッサージ効果」と言っています。
それに対して本当のレッスンは、厳しく孤独に、緊張を強いられます。そこでコツコツと重ねていくので静かなのです。