自製の楽器の形状に合わせ、弓も弾き方も工夫していくのです。それは、感覚→身体→楽器の順であり、楽器だけの完成度を単体として問うメーカーの基準のようなものではないのです。
考えてみれば当たり前のことです。ピアニストの指は、相手を倒したり、重いものを持つものためでなく、ピアノを弾くために進化させたものです。それに関わる筋肉の違いではなく、脳の細胞や指の神経細胞の働きによるところが大きいのです。
これはスポーツでは、常識です。体の運動を扱うのは小脳です。
ゆる体操の開発者の高岡英夫氏の監修しているサッカーのマンガでは、「大脳はテクニックを担っていて、フロントキックを蹴るプロセスを大脳が筋肉に命令する一方で、このテクニックが、スムーズに繰り広げられるかは小脳の働きにかかっていて、その時、筋肉は何も考えず、何も覚えていない[中略]筋肉は使うことで発達するが、筋肉の付く場所、形、量が違ってくる」とあります。
サッカー選手でも、軸がなく、背骨が屈曲し、固まり、大腿直筋が発達してしまう人と、軸があって背骨がゆるんで真っ直ぐ腸腰筋が発達する人とは、大きく違うといっています。この場合、サッカーということで、サッカー選手として問われることも違うと思いますが…。
声はいろんな使われ方をするので、このあたりは、声―スポーツ、一流のオペラ歌手―サッカーのように大きく分けてみるしかありません。浪曲、詩吟―相撲のようになるのかもしれません。
練習によって、筋肉を変える、筋肉の状態を変えるというよりも、脳を変えるということが大切になります。長期にわたり、本格的に一流を目指すのか、短期にあるレベルに楽に達するのかによっても違うでしょう。
小さな子供ほど、早期学習、かつ連続学習の効果が高いのは、こういうことから頷けるでしょう。音楽にも脳の形成の時期における変容ということで、臨界期に近いことがあると察せられます。私たちは10歳には戻れませんから、現実問題、これからの練習について考えていくことになります。