どうすればよいのかを聞かれるのですが、なかには、何もしない方がよい、今、言わない方がよい、ただ保つだけの方がよいというケースが、随分と多いのです。そいういうときにレッスンで黙っていられるか、我慢できるかの方が、そこで説明したり説得するよりも、ずっと難しく大変なことです。
すぐ効くような早急なアドバイスを求めると、よほど自信のあるトレーナー以外は、ペラペラと答えてしまいます。答えないと信頼を得られないと思うのと、早くたくさん教えたいからです。
レッスンでたくさん話していれば、時間も早く経ちます。それなりの充実感もあります。相手に満足感も与えられます。コミュニケーションをとるからです。私はこれを「偽のレッスン」と呼んでいます。それがひどいなら「仮のレッスン」です。
ことばのやり取りで安心して満足するのは、カウンセリングであり、レッスンやトレーニングとは違います。もちろん、トレーナーとして聞くことは大切です。トレーナーが一方的に話すレッスンは、MCだけで成り立つライブのようなものでしょう。
ときには、気まずいまま、あるいは沈黙で、ことばにならないまま終わる、というのもよいのです。そこから得られることは大切なことです。
このあたりは、トレーナーをサービス業と捉えている人やレッスンを顧客満足第一で評価する人にはわからないことでしょう。
大切なのは、何十回もあるレッスンのなかでの1、2回です。たった何回かのレッスンで得られることのために、何十回も何年も通うのです。
毎回、平均的な顧客満足度がよければよいのか、応対のよいトレーナーでいればよいのでしょうか。レッスンを自分のトレーニングに活かせるスタンスとしてもつことが、いかに難しいのかと思います。