たとえば、「歌える体づくり」といっていながら、「声の向き」の指導において、「できましたね」とほめるときには、いつのまにか声の高さが変わっています。「向き」ということをポイントにするのは、悪いことではありません。
高さが変わってできるようになったのなら(それが目的なら)よいのです。そうでなく、最初からできる高さに問題をすり替えて、「できた」というのは、まやかしにすぎません。
自信をつけ、トレーナーの信頼感をもたせるためにしているのなら、一種のトリックです。右に求めていたことを左にしてOKと思わせているのです。多くのトレーナーは気づかずにやっているのですから罪はありません。トレーナー自身が気づいていないのが、今の日本のヴォイトレのレベルです。こういう例はとてもたくさんあります。意図せずやっているのです。