実演家が声を育てることについてのメリット、デメリットとその判断の違いについて述べます。
私のようにトレーナーであっても、作品の選択やアドバイスまで加わるようになると、あたかもプロデューサーに近い役割になって、ぶちあたる問題があるからです。
トレーナーとして声を育てるには、声が使えるということを、表現のよしあしで判断していく必要が出てきます。現実に使えるためには声だけの問題にとどまりません。ディレクション、プロデュースの観点が入ります。これは、1990年代に基礎ヴォイトレづくりを重ね、指針としていた研究所がとらざるをえなかった歩みでした。
1.声までをみている個人レッスン
2.声とそのフレーズを磨くためのグループレッスンの付加
3.グループレッスンを中心とした表現のオリジナリティを磨くための総合レッスン
4.グループレッスンでの選別、優れた人の発表の場=ライブステージのセッティング
この順で、
1.声だけ(発声、共鳴、呼吸、体)
2.歌唱(アカペラ)、せりふ
3.PAや伴奏付、プロの伴奏(発表会)
4.バンドや打ち込みのBGM付(ステージ=実演)
研究所の拠点も場も、
1.レンタルスタジオ
2.PA付スタジオ
3.ライブスタジオ
(4.ライブハウス)
のように広がっていったのです。
これは、一人のアーティストが育っていくプロセスと同一です。おのずと研究所も大きくなり、90年代後半はライブハウスをレッスン場にするに至ったわけです。公開ライブ直前までいきましたが、そこで私がストップしたのは、時流に乗せることが音声(声)歌の完成よりも、ヴィジュアル面での拡充とならざるをえない状況に至っていたからです。