私が初期に直観的に理論立てて表した本には、あまり直すべきところはありません。ただ声のいろんな基本知識について、説明を加えています。他の本から引用したものは、知識や理論が短い間にも変わって、古くなったものもあります。いくつかの本で触れていますが、理論に理論で応じるのは研究家に任せ、現場で必要なことを学びましょう。
誤解の元になるのは、ことばの意図するものの取違えです。現場のトレーナーのレッスンでは、イメージ言語として使うので、そのことばの正誤を論じても、意味がありません。バスケットボールの「腕でなくて、膝でシュートしろ」みたいなことです。イメージ言語では、トレーナーと相手との間で成立して効果がでていたらよいのです。イメージ言語は、きっかけをひき出すインデックスにすぎません。
現場を知らない人が、理論から「間違っている」というのは、スタンスがおかしいのです(相手を否定することで自分を肯定し、何かに利用しようというような目的があるのでしょう)。
このように論のための論が、つまらないことを述べておきます。生理学や声楽の理論も、中途半端に知るのは、害です。トレーナーの指導でしか出てこないことばも、たくさんあります。
何を本当に問題にするかを学んでください。問題にしなくてもよいことを、問題として振りまわされないでください。そういう人が多いので気をつけるように注意しています。「声や喉がおかしいです」と言って、治療に多くのお金を費やしている人は、よく考えてください。