私は、よく「トレーニングは、ベターをベストに高めるために行う」と言っています。ベストに高めていくには、ベターが確実に再現できないと積み重なっていきません。シンプルなことで何百回も重ねることをくり返して精度を高めていくのです。
ベターが確実に再現できると、悪い状態が少なくなってきます。ひどい心身の状態になっても最低限、カバーできる実力を保つことができるようになります(この場合、声でよいのですが)。これがトレーニングの最大の効果であり、誰もが目指せる成果ともいえます。
長年やっても、ベストがプロとしてのベストにならない人もいます。一方、プロの仕事は、いつでも確実にこなせることに重点がおかれます。そこでのヴォイトレの目的は、才能をマックスに発揮できることよりも、安定した声が、いつでも思い通りに出せることにあります。高いレベルでのベター状態のキープということです。となると、プロになる、認められるときのパワー、説得力の伴う声は、オーティションに受かってデビューのところまでにしか使わないという不思議なことが起こるわけです。☆