ヴォイトレトレーナーは、一般的には声のプロであっても、偉大な伝説的なアーティストではありません。クラシックはともかく、ポップスでは、偉大な歌手が、歌のアドバイスはともかく、ヴォイトレを教えることは多くありません。楽器のプレイヤーと異なり、活躍した人が、そのコツを他の人に伝えられるものではありませんし、なかなかできません。本人も伝えることが楽器のように簡単でないことを知っているからです。
現役の歌手にとっては、喉への負担が少なくないこともあります。ヴォーカルとして大成する人の気質はあまり、教師に向いていません。そこで、指導については作曲家やプロデューサー、演出家などが担当することになるのです。
私は、ヴォイトレの本質は、中心となる声の発見、発掘、育成、それに加えて、歌唱のベースとなる声でのフレージングを発見、発掘、育成することだと思っています。
中心となる声を知るには、表現の最低単位として、フレージングを想定する必要があります。絵でいうとデッサン、色と線を見出す、育てるということになります。
歌は一色で、線だけでもデッサンできます。色を音色、線をフレージングと例えてきましたが、色は何色も必要ありません。一色でもよいのです。ただ、墨のように濃淡豊かに、緩急をつけて描けるなら、です。