研究所のトレーナーは、声楽家がメインで自らのステージが目的ですから、担当している生徒の人数を競うようなことはありません。むしろ、抑えがちです。トレーナーの仕事の過酷さを知っているからです。
生徒は、学ぶものがないと思うトレーナーにはつきません。そういうトレーナーはここでは残れません。私も採用しません。
世間にありがちのヴォイストレーナーの「お山の大将」、「裸の王様」といった状態は、どうして生じるのでしょうか。ここのトレーナーも自分を気に入る生徒だけに囲まれて感謝のレポートばかり読んでいるとなりかねないのです。他のトレーナーと比べて選ばれたり、他のトレーナーのレッスンより効果があると絶賛されると、そうならない方がおかしいでしょう。
しかし、別のトレーナーにも同じことは起こっているのです。
ときに私は、元のトレーナーを外して他のトレーナーにも行っている生徒はいるということを伝えます。トレーナーのうぬぼれは、生徒とレッスン場の心中をしかねないからです。